購入した絵画の写真や動画を商用利用することができるのかを知りたいですよね。
絵画の写真や動画を商用利用できるのかを判断するには、絵画の著作権を知っておくことが必要です。
絵画の著作(財産)権による保護期間は、画家の死後70年が経つと終わります。
そのため画家の死後70年が経つと、一般的には画像を利用できます。
しかし、今生きている画家の絵画は著作権の対象になるので注意が必要です。
☑こんな時は著作権を知っておこう。
- 購入した絵画を写真に撮って、その写真を使ったグッズを販売する場合。
- 購入した絵画を映した写真を、商品の販売パンフレットに利用する場合。
- 購入した絵画が背景に映り込んだ動画をYoutubeで配信する場合。
経営者、自営業、フリーランス(個人事業主)、副業をしている方にも役立つ、ぜひご覧いただきたい内容です。
それでは、詳しく見てみましょう。
注意:
この記事は執筆時の日本の法律を基にして、筆者の解釈で書いています。
法律は更新されるため、その内容や解釈、判断が執筆時とは変わる可能性があります。
個別の事例は、適用される法律が変わることがありますので、必ず弁護士にご相談ください。
☑この記事の目次
- 購入した絵画の著作権とは?
- 購入した絵画の写真や動画を商用利用すると、著作権の対象になりますか?
- 著作権のある絵画を商用利用する時に確認したいこと
購入した絵画の著作権とは?
購入した絵画に著作権が関わる理由
日本美術著作権協会(JASPAR)は、「著作権」を下記のように表現しています。
作品を制作した人の持つ、著作物の「表現」に関する権利です。
日本美術著作権協会「3.著作物とは何でしょうか」
著作権とは、絵画を制作した人が持っている権利のことです。
そのため、あなたが絵画を購入した後も、作品の著作権は画家に残ります。
絵画の写真や動画の撮影を撮ったり、配信したりする場合には著作権について確認することが必要です。
どのような絵画が著作権の対象になりますか?
著作権は、「思想や感情を創作的に表現したもの」にあります。
日本美術著作権協会は著作権について、下記のように解説しています。
この条文からいえることは、まず、人間の表現でなくてはならないということです。
日本美術著作権協会「3.著作物とは何でしょうか」
法律上、動物や機械は、思想や感情を持つ「人」には該当しません。
今の日本の法律では、著作権があるのは人が表現した絵に限定されています。
ちなみにAIは思想や感情を持つ人間ではないので、AIが描いた絵には著作権がありません。
参考までに、人が描いた絵画の価値について、下記の記事で詳しく書いています。
AIが描いた絵との違いを知りたい時は、ぜひご覧ください。
著作権は譲ってもらったり、購入することはできます。
絵画を制作した人は著作権を人に譲ったり、販売することができます。
画家から著作権を譲ってもらったり、著作権を購入した人は、その作品の著作権を持つことができます。
作品を購入するだけでは、著作権を購入したことにはならないのですか?
少し詳しく説明すると、著作権には著作者人格権と著作財産権があります。
日本美術著作権協会は、下記のように解説しています。
ここでいう著作権は、著作者人格権に対して、著作財産権といった呼び方もあります。つまり、人格的な権利に対して、財産的な権利があるということです。
日本美術著作権協会「6.著作権とは何でしょうか」
著作人格権とは、主に制作者の名誉を害する利用を禁止する権利のことです。
一方、日本美術著作権協会は、著作財産権を下記のように表現しています。
著作(財産)権は、支分権の束であるといった言い方をよくされますが、複製することや上演することにかかわる個々の権利を束ねたものということになります。
日本美術著作権協会「7.複製権とは何でしょうか」
つまり、著作財産権は絵画を写真や動画に撮影したり、配信したりする制作者が持っている権利です。
作品を購入しても著作権を購入したことにはならないので、注意しましょう。
購入した絵画の写真や動画を商用利用すると、著作権の対象になりますか?
商用利用は著作権の対象です
商用利用とは、絵画を営利目的で利用したり、絵画を映した写真や画像などを使った商品を販売することです。
購入者が商用利用のために作品を複製する場合は著作権の対象となります。
そのため、絵画の制作者から事前に許諾を得ることが必要です。
作品の複製とは、写真撮影、印刷、動画制作、コピーや画像化などのことです。
絵画を所有している人は画家に許諾を得る時に、作品の利用方法や利用できる条件をよく確認しておきましょう。
たとえば、購入した絵画が映っている写真を商品のパンフレットに使う場合や、購入した絵画を映した動画コンテンツを販売する場合は、事前に制作者に許可を得ましょう。
動画配信やウェブサイト、Youtubeの映り込みの著作権
著作権のある作品をYoutubeやウェブサイトなど誰でも見られるところにアップロードして掲載する場合は、「公衆送信権」の対象となります。
そのため、この場合も制作者に事前に承諾を得ることが必要です。
ただ、写真や動画撮影では、絵画が背景に小さく写り込むことがありますよね。
たとえば、下記のような場合について、文化庁のサイトに解説があります。
○写真を撮影したところ,本来意図した撮影対象だけでなく,背景に小さくポスターや絵画が写り込む場合
文化庁「いわゆる「写り込み」等に係る規定の整備について」
○街角の風景をビデオ収録したところ,本来意図した収録対象だけでなく,ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれる場合
○絵画が背景に小さく写り込んだ写真を,ブログに掲載する場合
○ポスター,絵画や街中で流れていた音楽がたまたま録り込まれた映像を,放送やインターネット送信する場合
著作権がある作品でも、背景に小さく絵画が写り込んだ場合は、制作者の許諾を得なくても利用できるとされています。
これは、あくまで絵画が小さく写り込んでいる場合です。
ただし、絵画の映り込みを利用して商品やサービスの販売につなげる場合は、著作権の対象になります。
このように判断が難しいため、絵画が写り込んでいる場合には、事前に問題がないかどうかを制作者に確認することをおすすめします。
屋外に設置された作品
アート作品の一部には、建物の外に設置されているものがありますね。
それが写真や動画などに映り込んでしまった場合はどうでしょうか。
参考までに、屋外に設置された作品の著作権について、公益社団法人著作権情報センターの解説があります。
公益社団法人著作権情報センターは、庁舎の外壁にある壁画の著作権を例に挙げて、下記のように説明しています。
庁舎の外壁の壁画は美術の著作物で原作品が建造物の外壁に恒常的に設置されている場合です。
公益社団法人著作権情報センター「Q&A インターネット・ホームページ」
この場合は、著作権法第46条によって、著作物の複製物の販売を目的として複製する等例外的に禁止されている複製以外には、自由に利用することができます。
もちろん、インターネット上のアップロードに伴う公衆送信も自由に利用できる態様に含まれます。
屋外に設置されている壁画などの美術品(原作品のみ)は、写真などの副生物の販売を目的として複製する場合を除き、Youtubeやウェブサイトなどに写り込んでいても、一般的には著作権の侵害にはなりません。
ただし、作家によっては個別に事前確認を求めている場合もまれにありますので、ご注意ください。
著作権のある絵画を商用利用する時に確認したいこと
このように購入した絵画の著作権とは言っても、個別の事例によって扱いが変わりますね。
そのため、購入した絵画が映っている写真や動画を商用利用する時は、問題がないかどうかを事前によく確認しましょう。
素敵な絵画を飾って、おしゃれな空間で過ごしたいですね。
この記事があなたのお役に立てば幸いです。
ご注意:
個別の事例は、適用される法律や判断が変わることがありますので、必ず弁護士にご相談ください。
本件に関連するいかなる損害に関しても、当社では一切責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
ご参考までに、油絵の飾り方の注意点を下記の記事でご紹介しています。
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